秘密のチョコレート

はじめに

閲覧ありがとうございます。

こちらの小説は、一章、二章、三章と分かれております。無料配布のほうでは一章のみ閲覧することが可能です。続きは無料の特設サイトにて公開いたします。一章の終わりにURLを載せるので、気になった方は是非そちらに飛んでみてください。

最後に、拙い文ですが、楽しんでいただけたらと思います。

小鳥遊京華

第一章 一幕
 女子高生の優雅な時間

 変わらない日々、つまらない授業、いつも通りのハゲた数学の先生。通称ハゲ。あーあ。教科書通りに進む授業は退屈で、窓の外を頬杖着きながら見てた。外では男子がサッカーをしてる。こうゆう時だけ席後から二番目で良かったて思う。しかも窓際席。友達からは優待席とか呼ばれてるここ。つまんない授業を聞き流すには丁度いい席。
 制服が可愛いから、受験頑張って入った高校だけど、なんか、やってることは中学と変わらない感じがする。変わったのは通学に電車とかバス使うようになったとことかだね。中学じゃ家近だったから有り得なかったんだよ。
 あと、友達も随分変わったかな。中学の時は芋っ子だったから、なんか芋芋しい友達ばっかりだったけど、高校デビューしたら、なかなか普通の友達が出来たし、化粧とか覚えたし、あんなに興味なかったファッションとか気を使うように、なったかな。
 ハゲの先生がチョークでカタカタ書いてる。内容はぶっちゃけ教科書で十分なんだよね。ノート書く意味なし。これで六十点とか取れちゃうんだから、ほんと、ハゲ要らない。

「森田、ここ答えてみろ」

「あ、はい!・・・・・・えーっと」

 森田くんどんくさ。ここぐらい簡単に解けるじゃん。答えは‪√‬二だよ。一瞬でこれぐらい解けなきゃ。ここの学校なかなかの偏差値なんだから。
 まだ答えられない森田くんにハゲは呆れたのか座らせた。
 外の風が少し冷たくなってきた。まだ、秋なんだけど冬支度しなきゃなぁ。セーターお気に入り、出そう。スカートは仕方ないかな。学校のジャーうざいじゃージでも履くか。だっさい、カーキーの緑のジャージなんだけど、仕方ないか。冬支度は大変だぁ。夏は可愛いピンクと紫のチェックのフリルの着いたスカートに黄色いリボンでお気に入りなんだけどなぁ。しかもブレザーもボタンとか凝ったデザインで可愛いの。冬は寒いからセーターなんだけど、それでも寒いんだよね。サンリオのポチャッコのセーターなんだけどまさかのカーキー。お気に入りなんだけど、ジャージもカーキーだからなぁ。恥ずかしい。シナモンとかにすればよかたかな。でもポチャッコ可愛いんだもん。カーキーじゃなかったら良かったんだけど。学校のジャージ、履くのやめようかな。
 北風が隙間風から吹いている。ここは優待席なんだけど寒いんだよね。それだけがやっかい。暖房とかこっちに届かなないんだもん。寒いけど窓開けようかな。なんかハゲの言葉とか解説聞くぐらいなら男子の体育見てた方がいいじゃん。サッカー見てた方が楽しい。それにしても素人とバリバリやってた人との差がよく分かるなぁ。ハゲの言葉とか解説とか聞いているより面白いじゃん。寒いけど。
 相変わらずカーキーのダサい体操着だけど。友達の一人は実は隣のクラスのサッカーが上手い人が好きなんだって。私は好きになったことないからどんな気持ちなのかわからないんだけど、ウワサではきゅんきゅんするんだって。なんかの心臓病じゃないとかあたしは思っちゃっちゃう。
 二回の普通の黒板と落書きだらけの机に、サッカーの、実況をかいていく。ああ。大丈夫。ここ古い学校だから問題なし。机の落書きとか大量にあるから大丈夫大丈夫。

「木枯、ここの問題を解け」

「え、あ、はい」

 優待席なのに、呼ばれちゃった。ちょっとサッカーに、夢中になりすぎたかな。さて、呼ばれたからには答えないとね。椅子から立ち上がり、教科書をぺらぺら、めくる。やっぱり似たような問題発見。数字さえ変えればオーケー。余裕な問題。とっとと答えてサッカー見たいわ。

「五です」

「……正解だ」

 苦味しでもかみ潰したかのように悔しそうな顔をしてハゲはまた黒板に戻った。ざまーまろ。私にはぶっちゃけ教科書だけあれば、ほぼ、勉強とか終わるんだよね。もちろん、難関校とかにはいけないよ?でも、偏差値六十ぐらいの高校ならいける。中学の時の勉強もひたすら教科書やるぐらいだったし。
 あ、の前の模試でもいくつか偏差値六十五超えてたなぁ。自分の自慢とかはどうでもいいだけどね。

 外のサッカーが色々動き回ってて面白い。赤のゼッケンと、ださいカーキーの戦い。ちゃんと見れてなかっ所があるから、イマイチだけど、多分、赤のゼッケンの勝ちじゃないかな。今軽く見てるだけで赤のゼッケンの方にボールが回ってる数が多いと思うから。ほら、ゴール。

「キーンコーンカーンコーン」

 ゴールと共に授業が終わった。ハゲの無駄に綺麗な字は途中で止まって、学級委員長が、号令をし、ハゲに感謝の欠けらも無い感謝を述べて数学は終わった。

 ハゲが教室から出ていき、ガヤガヤし始めた。私の机にもイツメンの友達が、寄ってくる。

「ハゲウザかったねー。てか栞菜指されてたじゃん」

 中学では考えられない、きゃぴきゃぴした友達。
 バーッとやって来て最初に話しかけてきたのは桃華。ピンクのセーターに、茶色い髪い天パで伸ばしてる髪の下がくるんとまるまってる、みんなのムードメーカーでもある、彼女は前の席にパフッと座ってニヤニヤ話しかけてきた。一見結衣のことをギャルと間違える奴がいるがそれはただのバカだ。確かに、スカートは入学すぐに切ってたみたいだが。

「速攻で答えててウケた。マジで栞菜頭良すぎ。ハゲも諦めればいいのに」

 私が答える前に横から入ってきたのはここの学級委員長、ゆかり。ストレートの黒髪ロング。ザ、生徒会長みたいな出立だが、彼女には欠点がある。

「ゆかり、さっきの答えわかったの?」

「ん?んーんー……わかてたよ!」

 私の質問に少し腕組しながら、答えたゆかり。瞳が左右を行き来している。完全に嘘だろ。わかりやすい動揺。ゆかりは悲しいことに馬鹿なのだ。結衣の方が全然できる。てか、結衣は体育以外は普通以上にできる子。あれ、これギャップ萌えか?
 ちなみに、ゆかりはクールビューティーなのだが、残念ながら胸はそんなにない。結衣はしっかりとしたものがパフッとある。私?私は平均ぐらいだと思っている。別にいいだろそんなこと。

「本当頭いいよね。栞菜」

「頭良くないよ。ただ教科書見てただけ」

「それが頭良いっていってんの!」

 たわいのない話。休憩時間も五分しかないし、仕方ない。そういえば私の名前は木枯 栞菜。極々平凡の高校デビュー女子だ。


だった。



あの時あの瞬間あれをしなかったら。


第一章 二幕
 チョコレートの噂

 帰り道、今日は珍しく秋晴れ。紅葉が散り、銀杏の木が銀杏を付ける。最近は台風とか突発的な雨とかで帰り道雨じゃないことなんて中々なかった。私はチャリを持っていないのだけど、ゆかりと結衣がチャリだったので私も歩いて一緒に帰ることになった。二人ともチャリに乗れば早く帰れるだろうに、私に合わせてくれる。ありがたいことだ。帰る方向と駅までの道のりが一緒なのも助かる。別に私はバスで帰っても、良かったのだけど、バス代もったいないので、普段は徒歩だ。付き合ってくれる二人には感謝だ。それにしても珍しいことが続くようだ。普段なら結衣は体育の、部活のサポーターとかで引っ張りだこだし、ゆかりは学級委員の仕事で定時に帰れることはあまりないのに。三人で一緒に帰れるのは珍しいこと。そして恒例のこれも。話には聞いていたけど、三人で実際に見るのは初めて。私達は、三人とも気合を込めて靴箱を開けた。

 カタン。トバババッ。

「ぷっ、あはは」
 腹を抱えて笑う結衣。手元には大量チョコレートが滝のようになだれこんできていた。

「ほ、本当にこんなことが、あ、あるなんて」
 驚愕しドン引きしているゆかり。咄嗟に一歩後ろに下がり漫画のように腕を顔の前でクロスさせている。

「あーあ、なんだかおこぼれもらってる気分」
 最後に私だが、何にも感じてないのでされるまま。とりあえず、靴を救出して散らばったものを、あらかじめ用意していた紙袋に詰め込んだ。

 この学校には噂ががある。十一月十一日に願い事をチョコレート系のお菓子に書いて、憧れの人の靴箱に入れると叶う。という、馬鹿げた話なのだけど、これが案外叶うと噂になっていた。
 入学したてての時、この噂が流れてきていたが、一年の時は、私達にはなんともなかった。だが、二年の才色兼備な先輩の靴箱にはそれはそれははち切れんかぎりに入っていたのを覚えている。ただの噂だしと思っていたが気になって見に行ったのだ。ちなみに私達さんは入れたりしてない。
 あの先輩の靴箱にはまた大量に入っているのだろうか。学年が違うのでわからないが、きっと今年も入っているんだろうな。
 で、今年だ。二年に上がった私達にその噂が流れ込んできたわけだ。ゆかりには男性からのが多いだろうなぁ。彼女はモデル級にクールビューティーで可愛いし、スタイルは一部除いて抜群だから、しょっちゅう、告白されてるのを私は知っているぞ。てか、なんでか外を見ると毎回見つけちゃうのだ。覗き見ではない。きっと見た目とは違うど馬鹿な部分が男性に刺さるんだろうな。ちなみに何故、馬鹿なゆかりが学級委員なんかになったかと言うと、見た目で男子からの票が多かったのと、一部の女子生徒の優しさでなったのである。私も優しさを込めた側だ。
 結衣には後輩や部活関係の人が多いだろう。なんせ、得意分野は体育。陸上で癖っ毛の髪がさぁーっと遠ざかっていく姿はライオンを彷彿とさせる。見た目はキュルンと守りたくなる系女子を醸し出しながらも、中身は部活のサポーターに引っ張り箱の彼女に憧れない後輩はいないだろう。ピンチヒッターで、必ず成果を上げる結衣には部活関係の男性からのも多いのではないか。ちなみに、ゆかりを学級委員に仕立てた裏のボスは彼女だったりする。
 最後に私だが、お姉に紙袋持って行けと言われたから持っていたものの、あの二人のようにモデル級ではないし、運動できるわけじゃないし、クールビューティーでも、ギャップも何にもない。部活は帰宅部だから部活関連もない。やっぱり二人の隣にいるからおこぼれをもらったのだろう。の、わりには量が多い気がしないでもないが。ツーブロックでウルフの髪をかき上げた。拾うにはちょっと邪魔だったのだ。まぁ、おこぼれでもチョコレートをもらったのだから、拾っていると、一つ不思議な形状のチョコレートを見つけた。大抵はハートマークだったりするのだが、これはなんで、桜の方?紅葉ならわかる。銀杏もわかる。でも、桜は季節違いすぎるだろ。なんとなく気になった私はそのチョコレートだけポケットに入れた。そのチョコレートに何が書いてあるのか見ないで。

 お姉に言われてたので、二人分の紙袋も持ってきててよかった。二人ともこんなにチョコレートがくるなんて思ってなかったのだろう。てか、私も思ってなかった。二人に紙袋を渡して、ガサガサとチョコレートを拾う。去年のバレンタインも、ホワイトデーも、こんなことしてたなぁ。なんて思いながら詰めてると、結衣が青い花を手にし仰いでいた。あれは確かクレマチス。何故こんなところに?

「その花どうしたの?」

「んー?なんか靴に入ってて綺麗だなぁって思って、ねぇ?」

「その花、私にも入っていたよ。栞菜は?」


 どうやら結衣ゆかりには入っていたらしい。私のはどうだろう。……ある。なんだか綺麗な花なのは花なのはわかるが少し恐怖を覚えた。直感が捨てた方が良いと言っているように感じた。

「……ちょっとその花、花壇にでも置いてこ」

あまり不自然ではなかっただろうか?二人を納得させられただろうか?それより、その花を手放してくれるだろうか。

「え、べっつにー?いいよぉ?」

「私も綺麗だしいいと思う」

 よかった。とりあえず、今回は私の直感に従って良かったのか、わからないが、手放させることに成功した。
 チョコレートを、しまい終わり、花壇にクレマチスを、刺して二人はチャリ置き場へ。私はその間、気になってていた桜のチョコレートを校門にむかいながら、食べた。色は白だったからきっとホワイトチョコだろと思っていた。予想はあたり。案外美味しいチョコレートだった。

第一章 三幕
 青の信号機

 二人がチャリ置き場から帰ってきて、校門を通り去る。銀杏並木。秋は何時までも綺麗な雰囲気を見せてくれる。が、たまに爆死案件もある。ほら、銀杏並木が広いからって、マフラーで隠しても無駄無駄。ちゅちゅしちゃってさ。

「うげぇ、最悪ぅ」

 結衣がガックリ肩を落とす。こう見えて結衣は恋愛とかが苦手だ。なんでも中学の時告られまくって毎日、友達をまたせた結果、その友達はいなくなったと、ため息混じりに話してくれたことがある。そこから告白は手紙を見た瞬間破り捨て、握りつぶすのが彼女の日課だ。小さい体でよくここまで、小さく出来るなぁ、と思うほどボロボロにし塵にしているのだ。

「は、恥じらいは、ないの!?」

 ガッシャーンと音を立てて倒れるチャリ。顔を真っ赤にし、手で隠しているが、地味に指の間から見てるゆかり。わかるぞ、クールビューティでも普通の恋愛にあこがれちゃうんだよね。クールビューティなのにピュアピュアなのは可愛い所。ゆかりはなんでこんなに可愛い見た目とギャップを兼ね備えているのにモテないのか?それともお決まりの天然なんだろうか?

「ほら、ゆかりのチャリ落ちてる。もーこうゆうの良いから早く帰ろ」

 私がゆかりの落としたチャリを拾いゆかりに渡して、二人の間をスーっと通っていく。あんなものドラマの見すぎだって。私のウルフの髪が通り過ぎる頃、二人はちょっと小走りで隣に帰ってきた。たわいのない話が花を咲かせる。でも、ところどころに現れる、爆弾に一人はため息混じりに、一人は慌てながらに話をしているのが見え見えだ。無視すればかんたんなのに。なんで嫌なものを見たがるんだろう。

「ね、栞菜には好きな人とか気になる男子とかいないの?」

「あ!?それ、あたしも、気になるぅ」

 またこの話か。私は笑顔でいつも通りに答える。NOと。
 ゆかりには好きな人がいる。そう、あのサッカー君だ。何が面白いのか、なんで好きになったのかは知らないけど、どうやら、憧れの先輩らしかった。ちなみに自分も貰っておきながら、あれだけど、ゆかりはその先輩宛に小さなチョコを七つ入れている。なぜ、七つなのかと言うと噂の影響だ。七つで好きですの合図。五つで憧れてますの合図。確かこの辺の噂だったかと思う。
 ちなみに結衣にはいるわけが無い。てか二次元にどっぷりだったりする。部屋中とあるキャラクターのポスターで、いっぱいだ。グッズを買いたいがために朝の新聞配達バイトをしているぐらい。別にそんなことしなくても結衣の家は普通に一軒家だし、離婚なんて考えられないぐらいラブラブな両親と、とろんとした姉がいるぐらいなので、お金には困ってる訳では無い。
 もちろん、私も、ゆかりもバイトはしてないし、別にお金に困ったことなんてない。結衣が勝手にやっているだけだ。何故朝かと言うと、夜にはそのアニメが始まってしまうのでリアルタイムで見たいのだと。その関係で部活のピンチヒッターもときたま断ることがある。この話は学校には内緒で私とゆかりのみが知っている。推しキャラのキーホルダーも持ってはいるのだが、私たち以外の前では絶対出さない。
 住宅が並ぶ急な坂を下って、信号を渡り、右に曲がったスーパーの角。そこまでは二人と一緒なのだが、そこからは、私一人になる。あと少しで信号機。そこで、何となくあの話をしてみた。

「今日のチョコの中、季節外れな桜のチョコ見つけたんだ」

「「あ、私も!」」

「「「え?」」」

 二人の顔を見て自然と声が出た。私だけじゃなかったんだ。てか、なんで二人は見つけられたんだろう?ビックリした顔がちょっと面白くて私達は笑った。
「何色だった?」
「私はぁ、ピンク色ぅ」
「え、色、一緒だと思ってた!青だと思ってた!」
桜のチョコレートの色はみんな違うらしい。なんか意味があるのか、意味はないのか。まあまあ、数あるうちの一つだ。そうゆうこともあるだろう。
 秋の風が吹く、季節が冬になっていく。

 大きな桜の絵が書かれたトラックがパーッと音を立てて横切る。風が私達のスカートを捲りあげた。
「きゃっ」
「ガッシャーン」

チャリの倒れる音が響く。私は二人の安全を確認しようと二人を見つめた。






「びっぐりじねぇ。がんな、ゆがりだいじょうぶぅ?」

「わだじばだいじょうぶ。がんなはだいじょうぶ?」






 二人の骸骨が横にいた。倒れたチャリをせっせと運ぶ骸骨。

 私は言葉が出なかった。


 青信号がピロピロとなりながら点滅をしていた。

第一章 四幕
 骸骨の町

 私は走った。

 全力で走った。二人が何が言っているのを聴くのも怖かった。普段の声じゃない、シワれたおばあちゃんの様な声。ただただ怖かった。信号を、渡り切って、駅へ。向かう途中、すれ違った人々はみんな骸骨。怖い。その前に私も骸骨?
 駅のトイレで自分を見た。骸骨じゃなかった。なんで私だけ?疑問はつかない。怖い、骸骨だらけのこの場所が怖い。時間が時間だから、通学路、通勤ラッシュいつもなら大丈夫なのだけど、ても、今日は骨ラッシュ。耐え切れなくて途中下車してトイレで吐いた。こんな怖いことって。骸骨が服を着て、普通に座って。なにこれ?
 はやく家につけ。早く家につけ。それだけを、祈って骸骨だらけの電車に乗る。おかさんも骸骨かな?怖い。安全地がわからない。今の骸骨達は私を襲うことはないが、いつ襲ってくるかわからない。怖い。お母さん、助けて。でも、そのお母さんが。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。家に着けば分かること。早く帰ろう。
 電車から降りて最寄りの駅から、冷や汗をかきながら足早に歩く私を骸骨が振り向いてくる。視線が怖い。早くお母さんは無事でいて。考えがまとまらない。とにかく早く。

 家に着いた。ドアに手をかける。恐怖心が私を上手く動かしてくれない。お母さんに早く会いたいのに、ドアを開ける手が動かない。
 あーもー。
 イライラして黒髪をくしゃくしゃに掻きむしった。こんな所で呆然とたっていても意味が無いのに。私ってば何してるんだろう。
「うぁぁぁあっ!」
 叫ばないとやってられなかった。叫びながらドアを開ける。両手で勢いよく開けたドアは簡単に開き私を中に突っ込むようにして、閉まった。もう、家に入ってしまったのだから何にも考えるな。とりあえず、お母さんの所へ。
「お母さん!」
「あら、どおじたの、がんな?」

 ソファで寝っ転がりながら、韓国ドラマでも見ていた、骸骨がカタカタカタと私に振り返った。

 ああ、神様。なんで私にこんな試練を与えるのか。
 私は立つ気力もなくなり、膝から崩れ落ちた。
 もうダメだ。

 と、思った瞬間、私の意識は途切れた。